パクリとデザインと炎上と矜恃

医療系全般の【デマ】情報を垂れ流しにしていた「Welq」というDeNA内のサイト
が炎上の末、閉鎖されました。
webにある程度なじみがある人ならば、数ヶ月前くらい前にはサイト内の怪しさ
とともに、不信感、危機感を持っていた案件だとは思います。
このままではいけないと、永江一石さんなどが中心となり不正を追及し、さらに
は都議会がひと睨みした結果、あえなく燃え尽きたという感じでしょう か。
ぼくとしてもこのようなサイトが検索上位を占めるなんてことはあってはならな
い事だし、ましてやそこに企業の倫理観や社会的貢献の意思があるとは まるで
感じられないので、閉鎖やむなし、やっていいことと悪いことがありますよ、と
いう感想です。
ここが個人的には重要なのですが、記事の多くは他の方の書いた記事の無断転用
であり(法律的にはグレーかも知れませんが、グレーであることを確信 的にパ
クっていたので、やはり無断転用です)、他者の文章をデマ記事に作り変えて金
儲けだけを目的にしているというのなら救いは無いな、としか思 えません。
ぼくも、微力と言えないほどの微力ながら、炎上騒ぎに一部加担したのは間違い
ないし、DeNA側からしたら閉鎖に追い込んだ人物達の端くれと言え るかも知れ
ません。
それはさておき、「パクリ」に厳しい世の中になってきました。それは当然の流
れと言えますし、99%は歓迎なのですが、同時に難しい問題も生じる のだよな、
という話です。
ぼくはグラフィックデザイナーですが、デザインでは往々にして「かぶる」こと
があるわけです。
昨年の東京オリンピックのエンブレム問題が記憶に新しいですが、あの件にし
たって佐野さん自身は否定されていますし、本当のところは誰も証明でき ない
ままであり、既成事実として「パクッた」ことで社会的にはケリがついてしまい
ました。
同業者として思うところは色々あるのですが、あくまでも世間的には「それはパ
クリである」ということなのでしょうし、そこに専門職としてのデザイ ン理論
だけを武装して戦っていくのも無理筋だよな、と思っています。
「パクる」→「かぶる」ことはイコールなのですが、「かぶる」→「パクる」こと
はイコールにならないところが難しいところだよな、と日々思いま す。
ぼくにしたって(というかデザイナーなら誰でも)、「このデザインは、あの作
品からヒントを得た」ということは常にありますし、それを「パクった なお
前!」と言われてしまえば、「いやあ、そう言われると困っちゃうのですが」と
しか返せないところです。
いまのところ、デザインのかぶりなどは「流行だから」とか「オマージュだか
ら」といった言葉でうやむやにされているところはありますが、誰かが本 気を
出して訴えたり訴えられたりを始めてしまうと、業界としてはあっという間に崩
壊の道を辿ることになるでしょう。
そのときはデザイナーすべてが人生設計の組み直しですね。
これはそこまで大げさな話でもなく、アメリカなどではここ最近そんなニュース
がちらほら目立つようになってきました。
マクドナルド店内で飾られていたグラフィティーアートが、ストリートアーティ
ストのパクリであるとして問題となったり、音楽業界でも「メロディー の盗用
だ」などとして裁判になったりしています。
さらにはそこに作者の遺族がからんできたり、明らかに慰謝料狙いの業者が現れ
たりとゲンナリするような展開になっているようです。金が欲しいだけ かよ。
つまるところ、ぼくらのような業種の場合、誰かが本気になって「パクリだ!」
と大騒ぎを始めてしまえば、バズり方にもよりますがすぐに炎上してし まう要
素のある仕事なのだな、としみじみ思います。
比較的のんびりと話しているのは、ぼく自身がこの業界自体を「そういうもの
だ」として楽しんでいるからでもありまして、パクリだのオマージュだの イン
スピレーションだの、ぜーーーんぶ引っくるめての馬鹿馬鹿しいことそのものを
矜恃として捉えているからです。
当たり前ですが、ぼくはパクりでデザインはしてません。
いつか自分自身にも降りかかるかも知れない「パクリ疑惑」があったとしても、自分自身の「パクリはしていない」という自負だけを頼りに目の前の仕事をこなすしかないわけですよね。
Welqのスタッフの方々は、そのへんは全部すっとばして金儲けに走ったのかなあ
と思ってしまいます。
ただし、犯罪的行為であるという点を除けば、プライドもへったくれもなくお金
を稼ぐことは、まぎれもなくいいことです。
ただひとつ言えることは、「お金儲けの先に、誰の幸せも生まない仕事」は、い
ずれ滅びるのだろうな、ということです。

peasemile studio

初めての子育てに奮闘する、ただの日常と些細なドラマを綴っていきます。

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