この世界の片隅に
これだけ流行っていて今更ではあるのだが、まだ公開しているし、チャンスがあ
るなら全ての日本人に観てもらいたい映画なので、僭越ながらぼくも少しだけ。
内容に関して言うのならば、他の方がもう絶賛しきっているし、ぼくも可能な限
りは他の方のレビューは目を通さないようにしていたつもりではあるが、それで
も抑えようがないくらい目に入ってくるくらい絶賛だったし、というか。
なので今更ぼくだけの視点で褒める点など残されていないのは百も承知で、それ
でもやはり、圧倒的な作品であると断言します。
ネタバレも何も、この物語が1944年から45年の広島を舞台にしている時点で、ぼ
くたちはこの先に何が起こるのか、そんなことは分かっているわけで。
具体的な描写があるかないかは別としても、この戦争には負けたのだし、人は死
に、誰かを殺し、飢え、悲しみ、それらの事実は動かしようのない脚本である。
そして、それを理解している故に、この映画は耐えきれないくらいの感情を揺ら
してくる。
映画館で、これほどまでに緊張感を観客同士で共有しあった経験もあまりないと
思う。
そのくらい会場が圧倒されていて、終盤は比喩表現でなく嗚咽なんかも聞こえて
きて、その一人は恥ずかしながらぼく自身でもあるのだけれど、喉が震えだすく
らいの涙がこぼれたのはいつぶりだろうか。
おかげさまで、最終盤の展開を今は正直思い出せないくらい感情がぐちゃぐちゃ
にされてしまったわけで。
具体的に言うと、物語開始の三分の一過ぎた当たりからは、すでに「お願いだか
らもうこの映画をとめてくれ」と思うほどにすずという人間を愛おしく思い、不
幸にならないでくれと願った。
ぼくが総理大臣になったら、間違いなくこの作品を義務教育の過程にねじ込む!
リベラルとか保守とか、パヨクもネトウヨも関係ないよ。
ぼくたちが、人間の尊厳と自由を求める限り、この作品は永遠に価値を残す名作
だと言える。
思う、のでなく、言える。
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