カルテット

ドラマ「カルテット」を観ている。
次週で最終回。
ドラマを見る習慣がないので、久しぶりに全話観たドラマだ。
それだけ魅力的だったと思うし、実際に話題にもなっている。
視聴率もほどほどで、「観ている人はハマってしまう」タイプなのだろう。
とはいえ、好きだから観ているうちに、どうにも納得できない点が多数でてきて
しまう。
そこらへんをすっ飛ばして「いいドラマ」というのも違うのかなあと思って。
●まず、すずめちゃん。
演じる満島ひかりさんは、ぼくが一番好きな女優さんだ。
彼女は過去に、自らの意思ではないが「人を騙した過去」がある。それによって
人生が狂わされた人だ。なのに、ドラマ序盤から彼女は特に避けられな い事情
もなく人を騙すことを選択している。「絶対に嘘をつかない」キャラなら納得い
くのだが。
それと、彼女は恋愛に関してとてもピュアな描写があるが、実際の満島さんは酸
いも甘いも経験された女性だということを、観ている側はみんな知って いる。
いくら「役と本人は違う」と言っても、ちょっと無理があるかなと。
●別府さん。
松田龍平さんは、こういう役をやらせると、画面に映ってるだけで笑えてしまう
のが素晴らしい。
ただ、そのキャラとしてやっぱり「やってはいけないこと」をやったと思っていて。
なんで同僚の女の子に手を出してしまったんだ。
そりゃ言いたいことは分かる。
大人の恋愛の矛盾なんかを描くとああなるんだろうけど、
それが後半からノイズになってくる。
彼はマキさんに対し、よく言えばプラトニック、悪く言えば狂気的な愛を持って
いる。
音楽に対しても誰よりも真面目で、サボらないことを信条としている。
そこでノイズが邪魔するのは「でもどうせ、すずめちゃんをキープと思ってるん
じゃないの?」とか、「音楽もどこかで妥協するんじゃないの?」と思 うのだ。
物語中に、明確に別府さんが成長した描写はないため、彼のキャラに対し信頼が
おけないままなのだ。
●マキさん
第一話で彼女は「自分が生き残るためなら、他人に情けをかけている余裕はな
い」ことを主張した。
ところが、その後の彼女は特にその主張を守ることはない。
演奏前に「不安だ不安だ」と慌てたり、犯罪を犯した旦那に対し、逃げようと
言ったり警察に行こうと言ったりする。
行き当たりばったりで生きているようにしか見えない。
しかし彼女には、そうは出来ない過去があるはずだ。
より慎重に、より人の目を気にしながら生きなければならない事情がある。
そのへんがいい加減になっている。
というか、声が小さいとかいう設定は何だったのか。
●アリスちゃん
このドラマ最大の収穫は、吉岡里帆という女優の発見であると思っているんだけ
ども、確かに彼女は素晴らしい。
彼女が画面にいるだけで「いやな感じ」になるし、笑ってしまうこともたくさん
ある。
が、まっっっっっったく必要ないではないか!!!
物語にどう絡んでくるのかと思ったら、何も絡まないまま退場していった。
脇役だからそれでいいとは思わない。
そういうのは「余計なキャラ」だと思う。
彼女を通じて成長をした人もいないし、損をした人も実はいない。
これだけの逸材を引っ張り出してきておいて、それはないだろうと思ってしまう
のである。
●全体に対すること
結局のところ、このドラマは背骨がないまま終盤に来てしまった。
音楽という夢を実現する話なのか、複雑な恋愛感情を描く物語なのか、過去を清
算する話なのか、どっちつかずなのだ。
そしてそれらの要素に対して特にリンク付けはされていないため、「音楽は音
楽」「過去は過去」「人生は人生」と別パートで描かれる。
となると、どちらに対しても誠実であるように見えてこない。
物語を飽きさせないためだろうが、マキさんに最初は「殺人者疑惑」があった。
そのケリのつけ方も特に必然性は無かったし、ましてや今の「偽戸籍疑惑」も、
唐突すぎてポカンとするだけだ。
何の伏線もないものをクライマックスに持ってこられても、それがどのような結
果になるのかに興味をもてない。
●最大の失速
このドラマの最初にあった魅力は、個性を持った人間が四人集まったことによる
化学反応だったはずだ。
それは、主演の四人の役者がいずれも実力者であるため、ただ喋っているだけで
も推進力があった。
ところが、物語は後半になるにつれその魅力は無くなっていく。
キャラクター同士が仲良くなるにつれ、個性が消えてしまったからだ。
具体的には第九話、家入さんやすずめちゃんが自分の思いを語るシーンがある
が、正直なところ、それらのセリフは誰が言っても問題ないセリフとなっ ている。
セリフのためのセリフであって、キャラクターからこぼれてくる言葉ではないと
思うのだ。
となると、もともと「過剰なセリフ」が持ち味の脚本が、途端に「くさい」ドラ
マという弱点に変わってしまう。
「人間ドラマ」から「人間性」が欠けてしまったことがドラマの失速であったと
思う。
●ここまで文句をつけておいて、さぞ面白くないドラマなのだろうかというと、
「いや、すごい面白いよ笑」と人には勧める。
ジェットコースタームービーだとかではない。
コーヒーカップムービーみたいなところか。
ぐるぐると目眩を起こすような展開に対して「あーあ、気持ち悪かった、また乗
ろう」と思えるかどうか、という話である。

peasemile studio

初めての子育てに奮闘する、ただの日常と些細なドラマを綴っていきます。

0コメント

  • 1000 / 1000