エジルのドイツ代表引退によせて

メスト・エジル選手がドイツ代表からの引退を表明しました。



先日のW杯でドイツ代表は前評判からほど遠いゲームしか出来ずグループステージで敗退したのですが、そのなかで批判の対象となっていたのもエジル でした。

批判が大きいこと自体は当たり前だと思っています。
代表の中でも知名度が高い点、チームの中での中心選手である点、10番を背負っている点、パフォーマンスがいつもよりも低かった点をふまえると、 どうしても批判は受けやすいだろうし、そのこと自体はエジルも理解していると思います。

ですが、今回の引退の理由はそこではありませんでした。

エジルの言葉を借りて理由を挙げるならば「ドイツ代表が優勝したときはドイツ
人扱い、負けたときは移民扱い」という対応にとても傷ついたのだと思 います。
もしくは、本気でうんざりした。

トルコ系移民であるエジルは、度々「ドイツ国民であり、ルーツはトルコにある」と発言していました。
トルコで地震があった際にはいち早く追悼のコメントを出し、ドイツ代表で戦う際には代表の為に働くことを誇らしく思うことを公言しています。
彼のなかではあくまでも「二つのアイデンティティーがある」ということが自然であり、誇りだったのだと思います。
ですが、そのエジルの意思をすべての人が共有出来るわけではないのでしょう。

エジルとしては珍しく、ドイツサッカー協会の会長を名指しで痛烈に批判しています。
差別主義者だと。
その発言だけでも、エジルは本気で代表に戻る気はないと決意しているのでしょう。
エジルのツイッターをフォローしているので、随時入ってくる彼のコメントを見ながら、ああ、なんでこんなことになるのだと、大きなショックを受けています。

あくまでも個人的な印象ですが、エジルは「代表に対しては忠誠を誓うが、ドイツ国に対してはトルコと同様にフェアに扱う」ようにしていたように見 えます。

国家斉唱時には口を結び、コーランを唱えていたとも言っています。

そしてそのような選手はヨーロッパ中にたくさんいます。
優勝したフランス代表もまた、多くの移民と共に成長してきたチームです。
準優勝のクロアチアは、国が分裂、崩壊、建国して30年もたっていません。
ベルギーも多民族国家、イングランドにいたっては未だに「イギリス代表」としてサッカーをやっていません。
エジルが今回抱えた問題、ストレス、そして引退という決断は世界中どこででも起こった可能性があるわけです。

これは日本も同様です。
朝鮮半島にルーツを持つ日本人も多い日本、年々ハーフやクォーターの数が増えている現状、あるいは移民を受け入れるかどうかの議論が進んでいるな かで、日本人がスポーツにおける日本代表をどう受け入れるのかは大いに不安があります。

ラグビー日本代表への一部の心ない声や、アメリカ国籍を持つ日系アイススケート選手への発言等を見ていると、日本人が移民を寛容に受け入れること が出来るとはあまり言えないと思うのです。

彼ほどの偉大なプレーヤーがこのような形で引退することになったことを深く悲しむと共に、これからのフットボール界に起こってはいけない出来事であると強く思う次第です。

FIFAの掲げる「NO RACIZM」とは何なのか。
はるか遠い桃源郷の話でもしていたのか。
残念です。

peasemile studio

初めての子育てに奮闘する、ただの日常と些細なドラマを綴っていきます。

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